「このままでは、日本の財産である老舗企業が消えてしまう…」
多くの中小企業経営者のみならず日本国家としてこの切実な悩みを抱えています。
実際、この40年余りで中小企業経営者の平均年齢は53歳から65歳超へと急上昇し、4人に1人は75歳以上という驚くべき現実があります。さらに深刻なのは、これら企業の52.1%が後継者不在という状況です。
この問題は、単に一企業の存続だけでなく、地域経済や雇用、そして日本が誇る技術やノウハウの喪失にも直結します。そこで、近年活発に行われているのが「M&A(企業の合併・買収)」による事業承継です。
実は、多くの経営者が「M&Aは大企業だけのもの」と考えがちでしたが、2024年では中小企業のM&Aが全体の8割を占めるまでに広がり、第三者への事業継承が一般的になってきました。
ただし、ここで大きな壁となる要素の一つがM&Aにかかる費用面です。
M&Aには専門家への報酬や、合併にかかる費用、事業を継続・発展させるための設備投資など、相当額の資金が必要となります。
そこで救世主として登場したのが、中小企業庁が推進する「事業承継・M&A補助金制度」です。最大1,000万円という手厚い補助を受けられるこの制度を活用すれば、費用面の不安を大きく軽減できます。
本記事では、この補助金の概要や種類、活用方法について詳しく解説します。
なぜ今、事業承継・M&Aが注目されているのか
統計が示す緊急性
現在の日本の中小企業経営者の平均年齢は65.1歳(2024年現在)に達しており、高齢化が着実に進行しています。
帝国データバンクが全国の全業種約27万社を対象に実施した2024年の後継者動向調査では、後継者が「いない」または「未定」とした企業が14万社に上り、後継者不在率は52.1%という深刻な状況にあることが明らかになりました。ただし、これは2017年に記録した過去最高の66.5%から13ポイントの改善を示しており、近年の取り組みに一定の効果が表れています。
この改善の背景には、官民による事業承継相談窓口の普及や認知度の向上があり、特に小規模事業者に対してもM&Aなどの選択肢が広がってきたことが大きな要因とされています。しかし、依然として今後10年間で約30万社もの企業が事業承継のタイミングを迎えることになります。
さらに注目すべきは、社長の年齢と企業業績の関係性です。
2021年の東京商工リサーチの調査によりますと、社長の年齢が高齢になるほど会社の業績悪化が鮮明になるという結果が報告されています。この統計が示すように、事業承継問題は依然として日本の中小企業が直面する待ったなしの最重要課題の一つといえます。
早期着手のメリット
事業承継・M&Aへの早期着手には、複数の重要なメリットがあります。
まず、十分な時間的余裕を持って計画を進めることで、経営権の移転を段階的かつ確実に実施することが可能となります。また、事業承継税制をはじめとする各種税制優遇措置を最大限活用する機会も広がります。
さらに、早期に取り組むことで、企業価値の維持・向上に向けた戦略的な施策を実施する時間的余裕が生まれ、より良い条件での事業承継が実現可能となります。
事業承継・M&A補助金とは?
事業承継・M&A補助金は、中小企業が円滑に事業承継やM&Aを進められるよう、必要な費用を補助する制度です。具体的には、以下のような支援が受けられます。
- M&Aに伴う設備投資や販路開拓費の補助
- M&A時の専門家(FA・仲介業者)活用費の補助
- M&A後のPMI(経営統合)支援
- 事業承継・M&Aに伴う廃業支援
これにより、企業はM&Aに伴う経済的負担を軽減しながら、スムーズに事業承継を進めることができます。
事業承継・M&A補助金の対象企業は?
補助金の対象となるのは、以下のような企業です。
- 5年以内に親族内承継または従業員承継を予定している企業
- M&Aにより経営資源を譲り受ける予定の中小企業
- 事業承継やM&Aの実施に伴い廃業を予定している企業
これらの企業は、補助金を活用することで、承継後の経営安定化や成長を図ることができます。
中小企業では「うちは縁がない」「大きな会社ではないから」とM&Aの検討を敬遠しがちですが、最近では小規模事業のM&Aも積極的に行われているため、一度相談してみる価値は十分にあります。
事業承継・M&A補助金の種類
「事業承継・M&A補助金」には、以下の4つの支援枠が用意されています。
1. 事業承継推進枠(最大1,000万円)
事業承継を機に、新市場開拓や設備投資を行う企業向けの補助枠です。例えば、新しい分野へ進出するための設備導入費用などが対象となります。
2. 専門家活用枠(最大800万円)
M&Aの際にフィナンシャル・アドバイザー(FA)やM&A仲介業者を活用する際の費用を補助する枠です。
3. PMI推進枠(PMI専門家活用最大150万円・事業統合投資最大1,000万円)
M&A後の統合プロセス(PMI)における専門家の活用や、事業統合に必要な投資を補助する枠です。
4. 廃業・再チャレンジ枠(最大150万円)
事業承継やM&Aに伴う廃業時の原状回復費用や在庫処分費用などを補助します。
事業承継・M&A補助金の活用イメージ
事業承継・M&A補助金は、単なる資金援助にとどまらず、企業の成長を促進するための重要な手段となります。適切に活用することで、経営の効率化、新市場への参入、事業の統合など、さまざまなメリットを享受できます。以下に、具体的な活用事例を紹介します。
1. 経営革新枠(経営者交代類型)
事業承継を契機に、新市場を開拓するため、高精度加工機械を導入し、再生エネルギー分野の特殊ボルトを開発する設備投資を補助金で実施。
2. 専門家活用枠(買い手支援類型)
M&Aを活用し県内の同業者を承継。
補助金を活用してM&A支援機関にFA・仲介業務を委託し、売上拡大と事業効率化を実現。
申請の流れと重要ポイント
事業承継・M&A補助金の申請から交付までは、以下のステップで進められます。
申請時の重要ポイント
事業承継・M&A補助金の申請において、最も重要となるのが事業計画の具体性です。
審査では、申請企業が提示する数値目標の明確さが重視されます。
たとえば、「売上を増加させる」という漠然とした目標ではなく、「3年後までに売上高を30%増加させる」といった具体的な数値目標の設定が求められます。
また、その目標達成に向けた施策についても、実現可能性の高い具体的な取り組みを示す必要があります。さらに、その事業が地域経済にどのような形で貢献できるのかという視点も、審査における重要な評価要素となります。
補助対象経費の計上においても注意が必要です。
まず、すべての経費について適切な見積書を取得し、その金額の妥当性を説明できる状態にしておくことが重要です。
また、補助対象となる経費と対象外経費を明確に区分けし、混同することのないよう注意しましょう。経費の妥当性については、市場価格との比較や、その経費が事業計画の遂行に本当に必要なものかという観点から、詳細な説明ができるよう準備しておくことが望ましいでしょう。
よくある申請ミスと対策
補助金申請において、最も多く見られるミスが事業計画の具体性不足です。とりわけ、数値目標が抽象的であったり、その達成手段が現実的でないケースが目立ちます。
また、補助対象外経費を誤って計上してしまうケースも少なくありません。
特に、汎用性の高い備品や消耗品、従業員の人件費などは、補助対象外となることが多いため、注意が必要です。
事業承継を成功に導く第一歩
事業承継は、企業の未来を左右する重要な経営判断です。しかし、その道のりには様々な課題が存在します。特に、専門家への相談費用や、承継後の事業発展に必要な設備投資など、資金面での懸念をお持ちの経営者様は少なくありません。
東京アライアンスアドバイザリーは、M&A支援機関として中小企業の事業承継のサポートが可能です。
補助金申請のサポートはもちろん、事業承継計画の策定から実行まで、経営者様に寄り添った一貫支援を提供しております。
「まだ先の話」と思われがちな事業承継ですが、早期の準備が成功への鍵となります。
事業承継について少しでもお考えやお悩みがございましたら、まずは無料相談からお気軽にご連絡ください。
私たちが、御社の未来に向けた最適な道筋を一緒に考え、ご提案させていただきます。